口腔乾燥症および唾液腺機能低下の病因 ③

こんにちは。歯科医師の中川です。

先日、5才の息子がぼうずにしたいと言い出しました。寒い季節なので、春以降をすすめたのですが、どうしてもしたいと言い張るので、実行。シャリシャリ感が最高です!ちなみに僕もぼうずです。

 

引き続き、口腔乾燥症および唾液腺機能低下の病因についてお話をしてまいります。

口腔乾燥症および唾液腺機能低下の原因の中で最も多いのは、処方薬および処方外薬によるものです。たとえば、一般的に処方されている薬物の80%は口腔乾燥を引き起こすことが報告されており、400種類以上の薬物が副作用として唾液腺機能低下を引き起こします。処方薬の服用は、加齢とともに増加し、65歳以上では75%以上の人が少なくとも1種類は処方薬を服用しております。さらに、処方薬の服用が増えるほど口腔乾燥も増加します。

唾液腺機能低下を引き起こす最も一般的な薬物は抗コリン作用を有しており、アセチルコリンが腺房細胞のムスカリン受容体に結合することを抑制することで作用を示します。この作用により、水が腺房細胞を通過して導管に入り最終的に口腔内に到達する生理的現象が阻害されます。重要なこととして、神経伝達物質が腺房細胞の細胞膜受容体に結合することを抑制する薬物、すなわちイオン輸送系を阻害する薬物は唾液分泌に量的、質的な影響を与えます。これらの薬物として、三環系抗うつ薬、精神鎮静薬、トランキザイナー、抗ヒスタミン薬、抗高血圧薬(α、β遮断薬、利尿剤、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシン交換酵素阻害薬、)、細胞障害性の薬物、パーキンソン病治療薬、抗てんかん薬などがあります。

がん化学療法も唾液腺の障害に関与しています。これらの変化は、治療期間中および治療後ただちに現れます。ほとんどの患者さんは唾液腺の機能が化学療法前のレベルに回復しますが、長期にわたる変化も報告されています。また、唾液腺はヨウ素を血中レベル以上に濃縮させるため、甲状腺の腫瘍の治療に使用される放射性ヨウ素は量依存性に耳下腺の機能を低下させます。

放射線療法は頭頚部がんの治療の一般的な方法ですが、永久的な唾液腺機能低下と持続する口腔乾燥を引き起こします。唾液腺のしょう液性腺房は放射線感受性が最も高く、次に粘液性腺房が高いと考えられています。照射量が少ない場合にはアポトーシス、照射量が多い場合には壊死が起こります。10Gyの照射後1週間以内に唾液分泌量は60~90%に低下し、唾液腺組織に対する照射量が合計25Gy以下の場合のみ、後に回復することがわかっています。