唾液の防御機構

こんにちは。パーク歯科クリニック 院長の中川です。

玄関先のきんもくせいが満開になり、心地よい香りが充満しています。数日間しか楽しめないこの時期は、秋の到来を肌で感じることができ、最も好きな時間です。来年はもう少し本数を増やしてみようかな、と考えております。

今回から、唾液の防御機構についてお話をしていきたいと思います。

ひとの唾液は、口腔組織を滑らかにして嚥下や発音のような口腔の機能を果たすだけでなく、歯や粘膜表面をさまざまな方法で防御しています。主な防御因子は、口腔から消化管への唾液の一定の流動であり、この洗い流し(フラッシュ)効果は、たとえば多くの内因性、外因性物質を消化管へ送り込みます。これらは、口腔および外来性の有害な微生物をしばしば含有しています。食物によって運ばれる当然変異誘発物質と同様に、外来性の細菌やウイルスのなかには、ヒト唾液の内在性成分によって解毒されたり死滅したりするものがあります。また、共生している何種類かの口腔細菌や、多くの有毒な代謝産物は、唾液成分によって阻害されたり、不活化されます。このように、抗菌物質を含んだ適量の唾液は、宿主の防御とひと口腔の微生物の侵入に介在する健康バランスに不可欠なものであります。

 

① 全唾液中の微生物

ヒトの口腔は、細菌が生育するにはほとんど申し分ない環境でありますが、その理由は温度、湿度、広い接着面積、豊富な栄養(成長刺激効果)が唾液を通して提供されていえるからです。この完璧な環境は唾液が一定に存在することによって可能となるもので、細菌の生育に対しては、たとえばアミノ酸や内生的な炭水化物のような栄養を分解し、数種の物質を供与します。

だ液は、口腔内に分泌される際には無菌の状態ですが、口腔を通過するときには常に口腔微生物によって汚染されています。共生している細菌と上皮細胞は、内在性の細菌が付着したり増殖するさまざまな口腔表面から、たとえば咀嚼によって、全唾液中に遊離します。主要な存在部位は、歯の表面(デンタルプラーク、口腔バイオフィルム)、舌面、扁桃です。しかし、微生物は口腔内表面の全体にわたって存在しており、健康なヒトにおいても通常、全唾液中に250~350種類存在しています。歯肉炎、歯周炎、扁桃炎、粘膜の炎症があれば、微生物の種類と唾液中の総数は著しく増加します。微生物は唾液中ではなく、口腔表面においてのみ増殖します。

次回も、唾液の防御機構についてお話をいたします。