小児の外傷歯について ②

こんにちは!院長の中川です。

引き続き、外傷歯についてお話をしていきます。
前回の口腔外傷の処置の基本として、

1; 持続的な感染の防止
2; 創部の安静
3; 歯髄の保存、整復固定、咬合調整
4; 小児および保護者の精神的なフォロー

を、上げましたが、今回は3および4についてお話します。

まず、外傷を受けた歯牙ですが、歯のみえている頭の部分(歯冠といいます)が、欠けている場合、歯の神経が出ていない状態で、明らかに神経を保存できると判断したときは、欠けた部位を樹脂などで修復処置します。また、一部神経が露出していても、ピンポイントであれば、露出した箇所を保護して、修復処置を行う場合があります。

明らかに歯の神経が露出して、神経の保存が難しいと判断した場合、レントゲン上で歯根が未完成の場合(特に萌出したての永久歯に多いです)、根尖の神経の一部はのこして歯冠修復(生活歯髄切断といいます)を行う事があります。
また、乳歯においては、将来的にはえかわることを予測して、生活歯髄切断を行う事が多いです。
歯根が完成している場合には、歯の神経の処置を行い(抜髄といいます)、その後歯冠を修復していきます。

次に、外傷を受けた歯が、動いている、もしくは抜け落ちてしまった場合についてお話します。

歯が動いている場合(歯の脱臼といいます)、ぐらつきが小さい場合には咬みあわせを調整して、あたりを弱くし、経過をみることが多いです。ただ、ぐらつきが大きい、歯が曲がっている(転位といいます)、歯が正常の位置よりも出てしまっている(挺出といいます)、逆に中に入りこんでしまっている(陥入といいます)場合は、元の位置に戻して整復し、接着ないしはワイヤーで固定します。その際、かみ合わせも調整します。
大体、2~3週間は固定した状態でおき、歯の安静をはかって落ち着くのを待ちます。まだ動揺がみられるときは、しばらくは固定した状態で経過をおいます。

歯が完全に脱落してしまった場合(完全脱臼といいます)、歯の保存状態が良ければ、元の位置に戻し(再植といいます)、固定して経過をおいます。歯の神経が死んでしまう場合もありますので、そのときは歯の根の治療が必要になってきます。
脱落してしまった歯が、汚れや経過した時間が長く(再植まで、できれば2時間以内が理想的です)、保存が厳しいと判断したときは、戻さないこともあります。そのときは、成人になり、顎の成長が落ち着くまで一時的な仮歯をつける事が多いです。

最後に、4の精神的なフォローですが、やはり乳歯であれば上手く生え変わるのか、永久歯であれば上手くくっつくのか、不安を挙げたらきりがありません。また、長期にわたる経過観察が必要ですので、定期的な検診と適切なアドバイスが最も重要な点として挙げられます。