局所麻酔 ②

こんにちは。院長の中川です。
前回に続いて、歯科治療で使用する局所麻酔薬についてお話を進めて行きます。

局所麻酔薬の作用機序について説明します。
局所麻酔薬は、脂溶性の3級アミンを塩酸と結合させた水溶性の塩酸塩としてあり、これが水溶液化されて4級アミンと塩素イオンとに解離しています。組織中に注射された局所麻酔薬は、組織の弱アルカリ性(pH=7.4)によって4級アミンあら水素イオンの取れた3級アミンになります。脂溶性の高い3級アミンは神経鞘を容易に通過し、軸索内へ移行します。そこで、水素イオンとふたたび結合して4級アミンとなり、神経膜の内側からナトリウムチャネルにある受容体に結合してナトリウムイオンの取り込みを阻害し、活動電位の発生を抑制することで局所麻酔作用を発現させます。

次に、局所麻酔薬の種類について説明していきます。
歯科用局所麻酔薬は、リドカイン製剤、プロピトカイン製剤、メピバカイン製剤があり、すべてアミド型の局所麻酔薬です。アミド型麻酔薬はエステル型に比べて、一般的に効果が強く、アレルギーや過敏症も少ないとされています。

・リドカイン; 日本では最も多く使用されている局所麻酔薬です。リドカインは、他のアミド型局所麻酔薬に比べ組織浸透性が強く、麻酔の効果発現も速やかで、持続時間は中程度です。血管拡張作用を有するため、血管収縮薬として、アドレナリンもしくはアドレナリン酒石酸水素塩が添加されています。

・プロピトカイン; アミド型局所麻酔薬のなかではもっとも毒性が低く、急速に代謝されるため蓄積しにくいですが、麻酔効果はリドカインにややおとり、麻酔の効果発現も遅いです。リドカイン同様に弱い血管拡張作用を有するので、血管収縮薬としてフェリプレシンが添加されています。

・メピバカイン; 組織浸透性、麻酔効果発現時間、麻酔時間ともリドカインと同程度ですが、持続時間が短いです。血管収縮薬は添加されていません。

歯科用の局所麻酔薬の特徴として、麻酔効果を高め、安全性を向上させるために、血管収縮薬が添加されている物がおおいです。局所の血管収縮作用により、注射部位の麻酔薬が血管内に吸収されにくく、麻酔薬濃度も濃いままで、麻酔作用は増強されます。また、局所の血管収縮作用により、出血が減少して術野が明瞭となり、円滑な手術操作が可能になります。アドレナリンは主に毛細血管の動脈側に作用し、フェリプレシンは静脈側に作用するので、アドレナリンの方が出血減少効果は高くなります。