プラークコントロールについて (歯周ポケット)

こんにちは。院長の中川です。

前回に引き続き、プラークコントロールについてお話をさせていただきます。

まず、プラークをそのまま放置しておくと、どんどんと歯周ポケット(歯と歯ぐきの間にできたすき間)が深くなります。これは、歯と接している部分の歯ぐきの細胞が、プラークの毒素によって破壊されると、歯と歯ぐきの間にすき間ができます。これがいわゆる歯周ポケットと呼ばれるものです。歯周ポケットは、歯ぐきが歯からペロンと剥がれてできたわけではなく、歯ぐきの細胞どうしが離れてできる亀裂なのです。

くわしく説明すると、歯周ポケットは 「歯肉の付着上皮が歯のエナメル質やセメント質の表面からはく離して形成されたすき間」ではなく、「付着上皮の結合装置(デスモゾーム)が破壊され、細胞と細胞とが離れてできる亀裂」なのです。

ポケットは細胞と細胞の結合が壊れたために形成されるので、歯のエナメル質やセメント質の表面には、付着上皮細胞が残っています。プラークが歯肉内部の結合組織内に侵入するのを防ぐため、歯周ポケットの先端には必ず上皮細胞があります。

上皮細胞は、プラークが増殖する外部環境と、血管を含む結合組織(つまり内部環境)の間の防波堤の役目をしています。細菌が血管のある結合組織内に侵入してしうと、増殖して菌血症や敗血症という死に至る危険性があります。

そんなわけで、プラークの侵入を食い止めるため、歯周ポケットができるとその分だけ上皮は根尖側に伸び、ダウングロース (down-growth)します。上皮のダウングロースは細菌の侵入から生体を守るために、必死に背伸びしている姿であると考えられます。

必死に背伸びしてダウングロースした上皮細胞のうち、プラークと接する部分の細胞は、プラークの刺激よって結合組織が破壊されて亀裂が出来ますから、さらにポケットが深くなります。

まとめてみますと、

健康な歯肉

→プラークの付着

→歯肉溝滲出液のせいさんが盛んになる

→歯肉溝滲出液中の好中球がタンパク質分解酵素を放出

→付着上皮細胞間の結合組織(デスモゾーム)の破壊

→細胞間に亀裂が発生=歯周ポケットが深くなる

→上皮のダウングロース

といった、負の連鎖反応が起こってしまいます。この連鎖反応によって、プラークがあると歯周ポケットがどんどん深くなっていくのです。

この悪循環をとめるには、ブラッシング(歯磨き)などのプラークコントロールは必須となってくるのです。