口腔乾燥症と唾液腺機能低下の管理 ④

こんにちは。歯科医師の中川です。

先日の休み、天気も良かったので子供たちと小学校まで歩いてみました。4月から息子も小学1年生になるので、通学路の確認も含めてです。実際に歩いてみると上り坂が長く、本当に行けるのか心配になってしまいました。休みの日は、こっそりと後を付けてみたいと思います。

引きつづき、口腔乾燥症と唾液腺機能低下の管理についてお話をしてまいります。

・ 鍼治療

ここ数年にて、鍼治療によって唾液分泌を促進する方法に興味がもたれています。放射線療法が終了してから6か月までの間に、鍼治療によって刺激的唾液の分泌速度が増加したというデータが報告されています。この鍼治療法は、一般的ではありませんが、ムスカリン作用(ピロカルピン、セビメリンなど)に反応するものの2次的な副作用のために薬物投与が困難な患者に対する方法の1つと考えられます。

・ 唾液腺の低線量放射線療法

3次元治療計画および3次元放射線療法は、唾液腺への放射線被爆を制限することにより照射後の唾液腺の機能を保つために考案されました。原発腫瘍のある耳下腺反対側に対する照射量が著しく減少するので、唾液腺の機能維持、口腔乾燥の減少、口腔乾燥に関連したQOLの改善がみられるようになりました。

さらに、唾液腺に対する照射量を減少しても、腫瘍およびリンパ節(腫瘍の拡大のリスクがあると考えられている)に対する放射線照射効率を損なうことなく、長期にわたる生存率は低下しないようであります。

・ 唾液腺の移植

外科的処置は、頭頚部放射線療法から唾液腺を保護するために行われています。その1つとして反対側の顎下腺をオトガイ部にに移動する方法があり、唾液腺を外部からの放射線照射による障害から遮蔽することができます。放射線照射後の追跡調査結果により、合併症の少ない人の口腔乾燥の愁訴は少ないことが示唆されています。したがって、唾液腺を毒性から保護し、現存する唾液分泌を促進することにより、放射線療法によって破壊された唾液腺を代償する目的で、外科的処置と化学療法剤を組み合わせることができると考えられます。

・ 遺伝子治療

遺伝子治療の分野における新たな研究により、唾液腺の障害の防止およびすでに障害を受けた唾液腺の修復が可能になるかもしれません。動物実験では、ウイルスまたは非ウイルスベクターを使用することにより、唾液腺への遺伝子導入がすでに行われています。口腔内から主導管にカニューレを挿入して唾液腺に近接する方法によって比較的非侵襲的にベクターおよび導入遺伝子を輸送することができます。