唾液とプラークpH

こんにちは。歯科医師の中川です。

昨年の暮れに、飼っていた芋虫がさなぎになったので、そのまま物置にいれてそのまま忘れ去られていました。最近暖かくなったので物置を開けてみると、アゲハに成長した姿が!!昨年は一度も採ることができなかったので、息子とともに大感激!よく観察したのちに、逃がしてあげました。

 

今回は、唾液とプラークpHについてお話をしてまいります。

① ステファンカーブ

プラーク内の酸生産能を持つ細菌は、特定の炭水化物を急速に代謝し、酸性の最終生成物へと変えます。その結果、口腔内のプラークpHは時間とともに変化しますが、その変化をステファンカーブと呼ばれています。プラークpHは、個人によってあるいは同一人物でも口腔内の部位によって異なるものの、安静時ではほぼ一定しています。プラークpHは発酵性の炭水化物にさらされると急速に低下し、およし5~20分で最低値に達し、その後、30~60分あるいはそれ以上の時間をかけてゆっくりと最初の値まで戻ります。

② 安静時プラークpH

「安静時プラーク」とは、食物として炭水化物を摂取したのち、2~2.5時間を経たものをいい、一方、「空腹時プラーク」とは、8~12時間にわたり炭水化物を摂取していないものをいいます。安静時プラークのpHは通常6~7ですが、空腹時プラークのpHは7~8が正常値です。プラークpHは、幅の広い値をとりますが、これは口腔の健康と対応しているのもと思われます。しかし、う蝕は多因子疾患でたることから、ある個人にとっては健康的であっても、別の人にとって有害となりえます。

安静時プラークは、乳酸塩にくらべて酢酸塩を多く含みます。プラーク中の主な遊離アミノ酸は、グルタミン酸とプロリンであり、アンモニアもかなりのレベルで検出されます。酢酸塩が多いのは、炭水化物代謝の最終産物とともにアミノ酸分解の最終産物がプラーク中に蓄積するためである。これらの代謝産物のプラーク中の濃度は、唾液中よりもはるかに高い結果となります。その理由として、プラーク細菌の貯蔵する菌体外多糖の代謝や、唾液由来糖タンパク質の代謝によって、これらの代謝産物が恒常的に産出されているという事実があげられます。唾液分泌が促進されていない「安静時」の状態では、唾液フィルムの移動速度が遅いため、代謝産物のプラーク外への拡散が阻害されてしまうのです。最低pHは、通常、刺激時唾液が分泌されなくなったあとに生じます。刺激時唾液分泌後の唾液の緩衝能は、数分間にわたり安静時唾液の緩衝能よりは高い状態に維持されていますが、やがて低下していきます。この唾液緩衝能の低下は、プラークpHの最低値と同時に生じるもの思われ、その結果プラークpHは低いままに維持されます。