唾液とプラークpHコントロール ⑨

こんにちは。パーク歯科クリニック 院長の中川です。

6月に植えたヒマワリが、ようやくはなを咲かせようとしております。種から植えたためか、発育が遅く、芽が出なかったものもありました。少し季節外れな感はありますが、うれしい限りです。

引き続き、唾液とプラークpHコントロールについてお話をしてまいります。

 

⑬ う蝕のないひとと、う蝕感受性が高いひとのプラークpH

う蝕のないひと、あるいはう蝕の少ないひとは、う蝕感受性の高いひとに比べ、安静時プラークpHがやや高く、発酵性炭水化物摂取後の最小pHの高く、また、安静時pHレベルに戻るのが速い傾向にあります。しかし、唾液を除外した場合、う蝕のないひととう蝕感受性の高いひとの違いはあまり顕著ではなくなり、最小pHはともに小さくなります。このような知見から、唾液はプラークpH反応を調整し、う蝕感受性を決定する因子として重要であることを示します。

う蝕のないひとのプラークはう蝕感受性の高いひとのプラークに比べ塩基を多く産出します。これら塩基にはポリアミンやアンモニアが含まれています。う蝕のない成人の耳下腺唾液中には、う蝕経験のある人よりも。遊離アミノ酸であるアルギニンとリシンが統計的に多く含まれていることが知られています。

⑭ 唾液刺激の臨床的意義

食事に伴って分泌される刺激時唾液が、口腔の健康を維持するうえで有用であることを裏づける証拠は多いです。長時間にわたる咀嚼が持続的な唾液分泌をもたらすことから、近年、唾液分泌を促進するものとしてガムをかむことが注目を集めています。

特に、シュガーフリーガムをかむことは有用であると報告されています。臨床研究から、シュガーフリーガムが非う蝕原性であること、食後に子のガムをかむと食物のう蝕原性を減弱する可能性があることが示唆されています。シュガーフリーガムは、カロリーを増加させることなく長時間にわたり噛むことができます。人工エナメル質う蝕病巣を用いた口腔内う蝕モデルの実験から、食後および間食後に「シュガーフリーガムを嚙んだひとでは、シュガーフリーガムをを噛まなかったひとに比べ、より効率的に再石灰化されることがわかっています。食後および間食後にソルビトールで甘みをつけたガムを噛んだ臨床実験では、う蝕発症を10~40%減少させることが報告されています。

一般的な知見とはいえませんが、多くの臨床家がキシリトールで甘みをつけたガムのほうがソルビトールで甘みをつけたガムよりもう蝕を減少させたと報告しています。キシリトールガムの長所の一つとして抗菌作用、とりわけミュータンスレンサ球菌への抗菌作用に起因するものとしています。