唾液とプラークpHコントロール ⑩

こんにちは。パーク歯科クリニック 院長の中川です。

先日、近くの山に昆虫採集に子供たちと出かけました。すると、そこにオオムラサキの姿が!!野生のオオムラサキをみるは初めてで、子供とともに大興奮!!ただ、近くにスズメバチの巣があることから、立ち入り禁止のため、離れたところで観察しました。ちょうどカメラも持ってきていなく、記録できなかったことが残念です。参考までに、息子の描いた絵日記を画像に挙げてみます。

引き続き、唾液とプラークpHコントロールについてお話をしてまいります。

⑮ プラークpHと唾液腺機能低下

唾液腺機能低下による口腔乾燥症のひとは、しばしばシュガーフリーガムをことを勧められます。ガムをかむことで症状が和らぐだけでなく、残存する唾液分泌組織の機能を促進することもできます。研究によると、唾液腺機能低下のひとでも、ソルビトールで甘みをつけたガムを噛んで残存分泌腺機能を促進することで唾液を分泌させ、10%ショ糖洗口後のpH低下を軽減させることができます。

この唾液の保護作用は、発酵性炭水化物摂取後のプラークpHを、唾液分泌の正常なひとと唾液分泌の低いひとで比較することで明確になります。唾液分泌が低下するとプラークpHの低下は顕著になります。

唾液腺機能低下のひとでは、定量型光誘導性蛍光法(QLF)によるう蝕の初期診断が重要と思われます。QLFは最新の診断装置で、臨床的に診断される以前の極めて初期の脱灰を検知することができます。この方法を用いることで、プラークpHを上昇させ唾液分泌を促進させる再石灰化治療の適応が可能になると思われます。

 

これまでの唾液とプラークpHコントロールについて、まとめてみました。

・プラークpHは、歯の脱灰および再石灰化の平衡状態をコントロールする重要な因子であり、初期う蝕が進行するのか修復に向かうのかを決定する。

・プラークpHは、酸(主に食事の炭水化物由来)と塩基(主に唾液中の尿素とアミノ酸由来)の産生のバランスを反映している。

・う蝕感受性は口腔内のさまざまな部位のプラークpHと関連する。すなわち、プラークpHが高いほど、う蝕感受性は低くなる。

・う蝕のないひとのプラークpHは高いが、これは唾液由来物質からの塩基産生の活性がより高いためと思われる。

・食事や間食後に、シュガーフリーガムを噛むことなどによって唾液分泌を促進することは、エナメル質再石灰化を促進し、う蝕発症を抑制する。

・唾液腺機能低下のひとで、唾液分泌機能の一部が残存している場合には、唾液分泌促進による恩恵をうけることができる。

・ステファンカーブの意義とそのカーブをコントロールする方法を理解することは、自分の歯を守るには何が最善の方法かということを知る、一つの方法である。

 

次は、唾液の防御機構についてお話をしてまります。