ミネラル平衡における唾液の役割 ③

こんにちは。パーク歯科クリニック 院長の中川です。

みなさん、節分は行いましたでしょうか?我が家も毎年、楽しく行事をさせていただいています。娘の幼稚園で鬼のお面作りがあり、毎年恒例で使わせていただいています。お面の裏には娘のなかの鬼が書かれていて、くいしんぼ鬼と、ねぼすけ鬼とのことでした。

引きつづき、ミネラル平衡における唾液の役割についてお話をしてまいります。

4 う蝕と再石灰化

炭水化物の摂取頻度が過剰であると、ステファンカーブにおけるミネラルの再沈着が不完全となり、ミネラルの蓄積的な損失が生じます。すると、う蝕病巣が形成され、それがう蝕の前駆状態になります。う蝕病巣は、エナメル質表層が低溶解性のため、外見上表層は無傷のまま、表面下でミネラルが消失することが特徴的です。小柱間に一致した表層の部位に微小孔が形成されるのみです。これらの小孔は、組織の深部へ酸を到達させ組織から溶解したイオンを溶出させます。

う蝕病巣が形成されたときでも、唾液は過度のう蝕形成の予防に重要な役割を果たします。口腔衛生や予防(フッ化物など)により、さらなる組織の欠損にかわって唾液またはプラークフィールドからのミネラルの沈着が起こります。実験モデルでは、初期う蝕病巣を唾液に浸漬すると再石灰化が生じます。レントゲン写真ではレントゲン透過像の消失が明らかになります。

臨床的には、再石化化は水道水へのフッ化物添加や、最近ではフッ化物配合歯磨剤に関与する報告があります。オランダでのTiel Culemborg研究で、8歳児の第一大臼歯頬側にみられたう蝕病巣の50%は、その後の7年間に消失したと報告されています。この知見を説明する要因は、歯のさらなる萌出であります。それにより、病巣はリスク部位から脱して再石化化を発現させる唾液に直接ふれるようになるからです。データを詳細にみると、病巣は白っぽくで光沢がない症例もあれば、歯面が黄色っぽく光沢がある症例もあります。前者(水道水へのフッ化物添加のない地区で多くみられる)は進行性う蝕病巣です。光沢がない状態は、細菌露出して酸に侵食されたエナメル質で、シーラントやコンポジットレジン修復前にエッチングされたあとのような現象を呈します。進行が停止した光沢のある歯面(水道水へのフッ化物添加がなされた地区によくみられる)は、多孔性のう蝕エナメル質に唾液のミネラルと有機質が沈着した結果です。そのようなう蝕病巣は、完全に再石灰化することはなく、時間とともに食品からの色素が蓄積し、最終的には褐色斑が形成されます。