口腔乾燥症の病因と診断 ⑧

こんにちは、パーク歯科クリニック院長の中川です。

前回のお話の続きになりますが、帰りにカブトムシのついをいただいてまりました。毎年、虫でおおわれていた我が家の玄関ですが、今年はカブトムシ2匹とさみしい状況でしたので、うれしい限りです!!

引きつづき口腔乾燥症および唾液腺機能低下の病因についてお話をすすめてまいります。

安静時唾液とは、味覚物質または咀嚼などの外要因の刺激がない状態で口腔に分泌される耳下腺、顎下腺、舌下腺、および小唾液腺からの分泌物の混合物です。健康な人を対象とした安静時唾液分泌速度に関するいくつかの研究では、全唾液の平均値はおよそ0.3~0.4mL/分  という報告がされていますが、正常範囲はかなり幅広いため、個人の分泌速度が異常かどうかを判断することはすこし困難であります。ただ、0.1mL/分以下の唾液分泌速度に関しては、明らかに唾液分泌低下の客観的な証拠とされています。

次に、安静時唾液分泌速度に影響を及ぼす要因についてお話をします。

・水分量: これは最も重要な要因であります。体内水分量が8%減少すると、唾液分泌速度はほぼゼロになるといわれています。約70kgの人では、体内に約50kgの水分を含むため、8%の水分量の減少は4Lの水分減少を意味します。より少ない体内水分量の減少でも唾液分泌速度は落ちる一方、水分過多は唾液分泌速度を増加させます。

・生物学的リズム: 体内リズムは約24時間周期のリズムで、体温や唾液分泌もそのリズムに含まれています。体温と唾液分泌速度は夕刻にピークに達し(高分泌相)、睡眠中はほぼ停止します。

・薬物: 多くの薬物は、副作用として唾液分泌の減少を引き起こします。おもに中枢神経もしくは直接的に唾液腺に作用しています。

・精神的な刺激: 食べ物のことについて考えたり食物を見たりすることは、ヒトの唾液分泌にとって大きな刺激要因ではありません。食物のことを考えると、唾液が分泌されるように感じられますが、嚥下するまでの間、口腔内に存在する唾液の量を意識するようなことはほとんどありません。一般的に食物について考えたり見たりすることは、唾液分泌の刺激にはほとんど影響がないようです。

・機能的刺激: ガムをかむといったような通常の唾液分布刺激は、刺激時唾液の分泌速度を増すという根拠はありますが、安静時唾液の分泌速度を増すかどうかははっきりとはしていません。