抜歯後のトラブル

こんにちは、院長の中川です。

今年の4月より娘が幼稚園に入園となりました。上の子が年長さんで、一緒に幼稚園バスに乗ることを楽しみにしていましたが、新型コロナウイルスの影響で、通園はわずか2日で終了、自宅待機となりました。早く自体の終息を願うばかりです。

今回は、抜歯後のトラブルについてお話しをすすめていきます。

抜歯後のトラブルで多いのが、麻痺、ドライソケット、後出血です。麻痺については予防策を、ドライソケットおよび後出血についてはその対処方法について述べていきます。

まず、麻痺ですが、上顎の歯を抜歯するときは、たとえば口蓋側に位置する正中過剰埋伏歯や埋伏智歯を抜歯する際、粘膜切開を誤って行い、鼻口蓋神経や大口蓋神経を損傷してしまうと、口蓋粘膜に知覚異常を生じてしまいます。ただ、日常の臨床では、上顎よりも下顎の方がトラブルを起こす可能性が高いので、下顎臼歯部の抜歯の際に必要な知識および手技について述べます。

まず浸潤麻酔ですが、とくにオトガイ神経の損傷に注意が必要です。浸麻針を、オトガイ孔に直接刺入しないように注意しましょう。

つぎに、伝達麻酔ですが、下歯槽神経と舌神経の損傷に注意が必要です。2進法や直達法などいくつか手技はありますが、注射針を刺入後に、針の先を振らないようにすることが重要です。患者様が鋭い痛みを訴えているときは、神経幹に接している可能性が高いので、ただちに注射針を引き抜きます。

抜歯時の注意点をみていきます。

まず、小臼歯ですが、オトガイ神経に注意します。残根状態や根が肥大している場合、骨の切削が必要な場合があります。このとき、粘膜骨膜弁を形成しますが、オトガイ神経を損傷しないようにフラップのデザインを考えます。とくに、たて切開をくわえる際にはオトガイ孔付近を避けるようにします。また、へーベルの操作をあやまり、頬側粘膜下にすべらせてしまうと、オトガイ孔を傷つける可能性があるので、慎重に操作します。

つぎに、下顎智歯抜歯について考えていきます。まず切開ですが、粘膜骨膜弁形成において、舌神経の損傷に注意します。第2大臼歯の遠心部切開は、骨直上とし、舌側にあまり求めないように注意しましょう。埋伏智歯の歯根方向は、比較的頬側に向いていますので、外に向くように切開をくわえると、比較的安全で、視野もとりやすいです。

つぎに、歯冠分割ですが、下歯槽神経の損傷に注意します。ゼックリアバーの挿入深度が深くなりすぎないようにします。また、舌神経の損傷に注意して、舌側骨を突き抜けないようにします。また、歯根脱臼時も、下歯槽神経を圧迫しないように注意します。